オキ



及川徹 x 木村一花
Oikawa Tōru x Kimura Ina



あの時からだろうか、
君のことが好きになったのは⋯。

2016.04.10




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      その(一花)はなかなか読まれ難いが、ぴったりの文字で繋げた彼女をこの世に存在させる。忽ち広大な野原に咲いた一つの野花を連想させるがその名前を論じろうとすれば簡単に答えられないのと似ていた。元々弱く美しい性情であるためか、その感受性が野原を満たすそよ風のようなものなのか、甚だ些細なこと一つに一喜一憂していたその姿が、必ず吹けば飛んでいくタンポポ胞子のようであった。

      ぽぽたん。あの子を見つめる自分は、及川徹は。一度も理性との関係形成や維持で平衡を描いたことがなかった。もともと余裕のある性情の彼にとって、少し幼稚で大げさな態度を取るほか、根本から熱を上げて揺さぶられるようなものはバレーボールに関すること以外には存在しなかった。存在しないはずだった。要するに軽ければ上に浮遊し、優位を占めるのは生まれつきだったということだった。じっとしていても一切合切に押し寄せる追従者の波は、一方では優越感も与えた。

      ただその態度のように多くの女たちに向き合ってきた及川は、掴むとすぐに飛び散って消えてしまいそうな細い野花一輪だけが咲く野原に立っていた。 岩泉の長年の友人であり―おそらくお互いが特別なようだった―また、見た目がちょっと好みだったし⋯⋯。あの、これ⋯描いてあげたかった。人見知りなのか、慣れないものなのか。まれにもその俺に冷たく線を引いていた女が、崩れる俺に渡してくれた紙一枚越しにはそれこそ光輝の下で磨き上げられて咲く自信があった。ようやくその奥深くに存在した無形の感情は名前を持つようになった。抱いたのは冷たさに反する意気地ではなく、密かに在りついた恋心であった。

      ズキン、自覚で育ち始める根は螺旋状に深くねじれていく。まるでその野花の模造品を欲しがることで積む罪業を予告するように。




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